もうひとりの私

『私』に会いに行ってきた

六本木の国立新美術館まで
急遽思い立ってのことだった

広い会場の中
何室も進んで行ったところに
その『私』は不安げに待っていた

一目見て

私は苦笑い

まだまだ自信なさそうだけど
今のところそれでいいじゃん

『散歩道』を描いた

石段を登る小道

向こう側が明るくて
歩いて行きたかった道

ところが行けなかった

石段の手前に垣根があり
閉められていて一枚の札板

立ち入り禁止

そんな情景を描いていた

今思えば笑っちゃう

大方出来あがっていたその絵
それはそれで面白いと思っていた

ところが
２月に本部からＨ先生が来られた折
厳しく叱られてしまった

『何故そんなものを描くのか
　向こうへ行きたかったら
　その垣根を取りなさい』

その言葉を聞いて

その通りだと思った

『行きたかったら垣根を取る』

そこから垣根を取る作業が始まった

今日会場にＨ先生が来られていて
ご挨拶をしたら笑顔で迎えてくださった

今年の『私』にはまだ

勢いが無い

動きが無い

色が無い

だけど今日
あらためて『私』と出会い

それでも嫌な『私』じゃなかったから
少しずつ進んでいけばいいと思った

『私』はやはり今の私です